インプラント治療コラム COLUMN

インプラント治療後の歯磨き・歯間清掃の仕方 インプラント周囲炎を予防するために


インプラントの人工歯は人工物のため、むし歯にはなりません。ただし、インプラントの人工歯を取り囲む歯周組織(歯茎、顎の骨など)は患者様ご自身の生身の組織です。


生身の組織のため、インプラントを入れた後も、毎日の歯磨き・歯間清掃は必須になります。


■インプラントの歯磨き・歯間清掃の仕方 研磨剤やフッ素はOK?


◎天然歯と同様の磨き方・歯間清掃でかまいません

インプラントは、天然歯と同様の磨き方・歯間清掃(フロスや歯間ブラシなど)でかまいません。インプラントだからと言って、インプラントのための特別な磨き方・清掃方法はありません。


インプラントのための特別な磨き方・清掃方法はないのですが、インプラントが入っている方の歯磨きでは天然歯の歯磨きと同様に、以下の①~③のような大切なポイントもあります。


以下のような点に注意しながらインプラント周りや全体の歯を磨くことで、歯周病の一種である「インプラント周囲炎」を防ぎやすくなります。


①ワンタフトブラシor歯ブラシを細かく動かしインプラントを取り囲む歯茎の境目を磨く

ワンタフトブラシとは、ペンのような形をした毛束が細い歯ブラシです。


ワンタフトブラシを用い、インプラントの人工歯と歯茎の境目を磨くことで、アバットメント付近(歯周ポケット)についた歯垢・食べかすなどの汚れを取り除きやすくなります。


ワンタフトブラシのほか、歯周病用の歯ブラシを細かく動かすことで人工歯と歯茎の境目に毛先が入りやすく、歯の清掃性を高めるのに役立つこともあります。


②研磨剤や顆粒を含む歯磨き粉の使用は控える

お口の中にインプラントが入っている方は、研磨剤や顆粒(汚れを落としやすくするためのツブツブ)を含む歯磨き粉の使用は控えましょう。


インプラントの人工歯と歯茎の境目の部分に研磨剤や顆粒が入り込み、歯茎の炎症(=インプラント周囲炎の初期症状)をひき起こす可能性があります。


③フッ素を含む歯磨き粉は使ってもOK

インプラントの人工歯に対しては、フッ素を含む歯磨き粉は使ってもOKです。


以前は、「フッ素入り歯磨き粉はインプラントのチタン金属(インプラント体・アバットメントの材料)を腐食させる」「インプラント患者はフッ素入り歯磨き粉は使用すべきではない」という説が広まった時代がありました。


事実、研究では、高濃度のフッ素(900ppm以上)を長時間、チタンにふれさせるとチタンが腐食する可能性が高まることが明らかになっています(※)。


(※)日本フッ素研究会 松井孝道歯科医師
チタン製インプラントの腐食に対する
臨床的考察
」(2015)より引用。


しかし、上記の研究データはフッ素の濃度を一定に保ち続けた状態で、長時間、フッ素をチタンにふれさせた場合の結果です。


通常、歯磨き粉はお口の中で唾液をはじめとする水分で薄まり、フッ素濃度は1/3~1/5程度に希釈されます。


たとえ、現在市販されている、高濃度のフッ素を含む歯磨き粉(1450ppm)を使ったとしても、フッ素濃度は300~500ppm程度に希釈されると考えられます。


以上の理由により、高濃度フッ素が入った市販品を含め、市販のフッ素入り歯磨き粉・フッ素入りマウスウォッシュが原因でインプラントのチタン金属が腐食する可能性はほぼありません(※)。


(※)日本口腔衛生学会
フッ化物配合の歯磨剤の利用はチタン歯科
材料使用者にも推奨すべきである
」(2015)
より引用。


チタン金属が腐食する可能性はほぼ無く、天然歯の歯質を強化し、むし歯予防の効率を高めるため、インプラント使用者の方のフッ素入り歯磨き粉の使用は歯の清掃における重要な選択肢になります。


{インプラント手術直後~1ヶ月間程度は、フッ素入り歯磨き粉・フッ素入りマウスウォッシュの使用は控えましょう}


高濃度フッ素の製品を含め、市販のフッ素入り歯磨き粉・フッ素入りマウスウォッシュによるインプラントのチタン金属への悪影響はほぼありません。


ただし、インプラント手術直後~1ヶ月間程度は、手術後専用の毛先がとても柔らかい歯ブラシ(商品名:TePe)を患部付近には使用するように指導させて頂いております。大事を取り、フッ素入り歯磨き粉・フッ素入りマウスウォッシュの使用はお控えください。


インプラントの手術直後~1ヶ月間程度の時期にフッ素入り製品を使用した場合、歯茎の創口にフッ素が入り込み、顎の骨とインプラント体の結合に悪影響を与える可能性は否定できません。


患者様や症例によって異なりますが、インプラント手術後、1ヶ月間程度が経って歯茎の状態が安定してきましたら、フッ素入り歯磨き粉・フッ素入りマウスウォッシュを使えるようになっていきます(※)。


(※)インプラント手術後、フッ素入り歯磨き粉・フッ素入り

マウスウォッシュの使用を開始できるタイミングについては、

歯科医師までお尋ねください。


{インプラントが入っている方は、歯科医院でのフッ素塗布には注意が必要}


歯科医院では、むし歯予防のためのフッ素塗布で9,000ppmなどの高濃度のフッ素を歯に塗ることがあります。


通常、フッ素によるチタンへの悪影響を考慮し、インプラント治療を行っている歯科医院では、インプラント使用者の方への高濃度のフッ素塗布を行うことはあまりありません。


注意が必要なのは、長期間の出張・旅行・引っ越しなどで他の歯科医院で歯のクリーニングを受ける場合です。他の歯科医院で歯のクリーニングを受けるときは、「インプラントが入っている」「高濃度のフッ素塗布はしないでください」この2点を歯科医師に伝えておきましょう。


【セルフケア&プロケアでインプラント周囲炎を予防しましょう】


インプラント周囲炎をはじめとするお口の病気を防ぐには、ご自身で行う毎日のセルフケア(歯磨き+歯間清掃)が欠かせません。


セルフケアに加え、歯科医院で受ける定期メンテナンス(プロケア)も重要です。


インプラントを維持し、お口の健康を保ち続けるために、セルフケアをしっかり行うと共に歯科医院で定期メンテナンスを受けましょう。

白山歯科クリニック
歯科医師
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