
「歯のインプラントを入れた人には、MRI検査ができない(MRI検査を受けられない)」
「歯のインプラントは、空港の金属探知機にひっかかることがある」
上記のような情報を、ネットで目にする・人づてのお話で耳にしたこともあるかもしれません。
インプラントがあると、MRI検査を受けられなくなる…
インプラントは、空港の金属探知機にひっかかる…
本当なのでしょうか?気になりますよね。
今回は、「歯のインプラントは、MRI検査や金属探知機で問題が起きる?」のお話です。
目次
■インプラントがあっても、MRI検査を受けられます
◎インプラントのチタン金属は非磁性金属のため、MRI検査を受けられます
{MRI検査とは}
MRI検査とは、磁力(磁場:磁石と電磁波)を利用し、体内の軟組織などを断面画像で撮影する検査機器です。
磁力を利用する機器のため、MRI検査を受ける方が指輪などの金属(磁性金属)をつけたままMRI検査を受けことはできません。
金属(磁性金属)をつけたままMRI検査を受けると、MRI機器に金属がひっぱられてしまうこともあり、身体につけている金属(磁性金属)が原因で、MRI検査の際にやけど・骨折・臓器損傷などの大きな事故(吸着事故)が起きる可能性も。
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気になる方もいらっしゃる、歯のインプラントとMRI検査の関係。
結論から、お答えします。
インプラントがあっても、MRI検査を受けられます。
インプラントのチタン金属は磁力(磁場)に反応しない非磁性金属です。非磁性金属のため、インプラントがあっても、問題なくMRI検査を受けられます。
■歯のインプラントが空港の金属探知機にひっかかることは、ほとんどありません
◎空港の金属探知機の多くは電磁誘導方式のため、インプラントのチタン金属が反応して職員に止められることは、ほとんどありません
空港の金属探知機では、主に「電磁誘導方式」が採用されています。
電磁誘導方式の金属探知機は、インプラントのチタン金属や純金などの非磁性金属が反応しにくい(検出しにくい)特徴があります。
余談ですが、ニュースなどで耳にする「純金の密輸を空港の金属探知機で発見できなかった」理由は、純金が電磁誘導方式に反応しにくい非磁性金属のためです。
上記の理由により、非磁性金属である歯のインプラントのチタン金属が空港の電磁誘導方式の金属探知機に反応することは、ほとんどありません。そのため、空港の職員に止められることは、ほぼありません。
インプラントをご使用の方は、どうぞご安心して、空の旅を楽しんでいただければと思います。
◎X線方式の金属探知機にインプラントのチタン金属が検出される場合はあります
空港によっては、「防犯性を高める」などの理由で非磁性金属を検出可能なX線方式の金属探知機を用いている場合も。
X線方式の金属探知機は非磁性金属を写し出すことが可能です。ただし、歯のインプラントは、その存在・治療法を世間に十分に認知・認識が進んでいる、一般的な歯科治療になります。
X線方式の金属探知機に歯のインプラントのチタン金属の影が写し出されたからと言って、空港の職員に呼び止められる可能性はあまりないでしょう。もし呼び止められた場合は「インプラントをしている」ことをきちんと伝えれば問題ありません。
■歯のインプラント、CT検査は問題ない? 本当に、インプラントは検査全般で大丈夫なの?
◎CT検査やレントゲン検査では、歯のインプラント周辺に影ができてしまう場合があります
磁力を利用するMRI検査に対し、医療現場では歯科用CT・医科用CT(放射線を用いる検査機器)など、CTを用いてCT検査を行うこともあります。
MRI検査では、歯のインプラントのチタン金属により問題が起きることは基本的にありません。
なお、歯のインプラントがあっても、CT検査を受けられます。CT検査を受けられるのですが、X線(放射線)を用いる方式上、CT検査では、歯のインプラント周辺に影(金属アーチファクト)ができてしまう場合があります。
CT検査と同様に放射線を用いるレントゲン検査でも、歯のインプラント周辺に金属アーチファクトによる影が生じることも。
金属アーチファクトによる影が生じた場合、検査箇所の画像が乱れ、検査したい部分を詳細に確認しにくくなる可能性があります。
ただし、歯のインプラントのチタン金属による影(金属アーチファクト)が原因で、診断・治療に大きな影響が出るケースは、それほど多くはありません。
なお、近年は、金属アーチファクトの影響を受けにくいCT機器・レントゲン機器も登場しています。
◎磁石で装着するマグネット式の「インプラントオーバーデンチャー」はMRI検査を受けられない可能性があります
「歯のインプラントは検査全般、大丈夫です!」
…と言いたいところなのですが、実は、歯のインプラントの中には、MRI検査を受けられない可能性がある物も。
MRI検査を受けられない可能性があるのは、磁石で装着するマグネット式のインプラントオーバーデンチャー(インプラントで支える+マグネットで装着する、安定性が高い総入れ歯)です。
マグネット式のインプラントオーバーデンチャーは、用いている磁石がMRI機器に引き寄せられるおそれがあります。
MRI検査での問題に加え、インプラントオーバーデンチャーの磁石の強い磁力がCT検査の金属アーチファクトの影を大きくし、検査画像を乱してしまう可能性も。
上記の理由により、マグネット式のインプラントオーバーデンチャーは
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MRI検査を受けられない
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CT検査の検査画像を乱してしまう
可能性があるため、注意が必要です。
マグネット式のインプラントオーバーデンチャーをお使いの方は、
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MRI検査
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CT検査
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レントゲン検査
の前に、必ず、医師に「マグネット式のインプラントオーバーデンチャーが入っている」ことをお伝えください。
マグネット式のインプラントオーバーデンチャーをお使いの方は、検査の種類、ご希望によっては、
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MRI以外の検査を行う
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MRI検査を受けるために、マグネット式からボタン式にインプラントオーバーデンチャーの装着方式を変える
などの対処が必要になる場合があります。
【金属アーチファクトの影響を低減した歯科用CTを用い、CT検査を行っています】
神奈川県小田原市の白山歯科クリニックでは、金属アーチファクトの影響を低減した歯科用CT「シロナXG3D」を用い、CT検査を行っています。
シロナXG3Dは「MARS(Metal Artifact Reduction. Software:金属アーチファクト低減ソフトウェア)」機能を搭載。MARS機能により、銀歯やインプラントのチタン金属が原因で生じる金属アーチファクトを低減し、画像診断の精度を高めています。
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今回は、「歯のインプラントによる、MRI検査・CT検査・レントゲン検査&金属探知機への影響」のお話をさせていただきました。
今後も、当院では皆様に関心を持っていただけるトピックを更新していきます。お手すきの際に、ブログをお読みいただければ幸いです。
